二人のビッグ・ショウ!

File.05:ロナルド・クーマン と 貴闘力 忠茂

ロナルド・クーマン貴闘力 忠茂
元オランダ代表元関脇
EURO1988優勝
スペイン・リーグ4連覇
1991〜92年チャンピオンズ・カップ優勝
2000年3月場所優勝(12勝3敗)
フローニンヘン〜アヤックス〜
PSVアイノホーフェン〜FCバルセロナ
〜フェイエノールト(引退)
>>アヤックス〜ベンフィカ
二子山部屋(引退)
>>大鵬部屋(現大嶽部屋)
リベロ/センターバック。強烈なキック力も武器。突き押し型の力士。現役時代は関脇まで昇進。


今回は、力学についてのお話しです。
と言っても私は、力学をちゃんと習った事など一度もありませんから、ちゃんと習得されている方からすると、まあいろいろとツッコみ所があるかもしれませんが、大目に見てください。

スポーツ選手の能力については、様々な角度から多種多様に組み合わさった総合を判断すべきではありますが、これを理解するために一旦個別の力と作用に解いてみる事は、個人的には有意義な事だと思っています。

例えばこうです。 サッカー選手がボールを蹴る時、蹴る力を大きくすればする程、方向の正確性は落ちる。
弱くてもトー・キックなら方向の精度は落ちるだろう、というように他の要素も影響する事ではありますが、一旦キックの力と方向性についてだけ切り出して考えてみます。

最大のキック力が5の選手Aが5の力で蹴ると、方向性の精度は1(最低)になります。
でも最大のキック力が10の選手Bが5の力で蹴った場合は、同じ飛距離・威力で方向性の精度は6となります。


“強く蹴る”の意味には、ボールに加わる力の大きさ、という考え方もあります。 でも、もうひとつの観点があります。
その選手のMAXの力の大きさに対する比率という考え方です。

ある選手Aがメ一杯ボールを蹴る時の力が5だとします。 この選手が5の力でボールを蹴った場合は、方向の精度は1=最低です。(力が最大だから、相反する尺度は最低に一旦置きます。)

ところが、また別の、メ一杯蹴る時の力が10の選手Bがいたとします。
こちらの選手が5の力で蹴った場合は、同じだけの飛距離が期待でき、且つ方向の精度はその人の最大の約半分=6で飛ぶハズです。

誤解を恐れずに言うならば、ロナルド・クーマンは、こうした力学の上に成り立ったSUPERな選手だったと思うのです。
つまり、後者の選手B。MAX POWERがデカい選手ですね。

一般にクーマンと言えば、あの強烈なFKのイメージがまず浮かぶと思いますが、それ以外にも強烈なキック力をバックボーンとして一発で途方も無く遠い逆サイド前方にいる選手に一発でピタりとパスを通したり、試合中の流れの中でもおおいにあのパワーが活きていました。

長いパスは、また別の蹴り方でコツがあるんだよ! 単にキック力の問題じゃぁない。
それも真実でしょう。
でも、力学にのっとったPLAYの方が、より間違いが無く結果が期待できると思いませんか?

そんな訳でロナルド・クーマンは、力学を感じる選手の西の横綱だ、と思っていたのです。

では東の横綱は、と言うと、(実際には関脇でしたが)貴闘力 忠茂(現・大嶽親方)です。
通の相撲マニアからは全く支持されなそうなタイプですよね。
どうやら相撲が本当に好きな人は、隆三杉関などの力学を大いに活用した美しい相撲をお好みの方が多いようです。
通常、テコの原理は力点でかける大きさを小さくするために用いられます。
支点(赤い丸)〜力点の距離を支点〜作用点の2倍にすれば、力点でかける力が5でも、作用点では10の力になります。
うまく、自分が支点からの距離を大きく取れれば、自分がかける力は少なくて済みます。
逆に支点〜力点の距離が、支点〜作用点の距離の半分しか取れなければ、力点で10かけた力も、作用点では5しか伝わりません。
でも、支点からの距離が相手の半分しかなくても、かける力を20にすれば、作用点では10になり、人が一人倒れるという計算になります。
よくいう、テコの原理などを極限まで利用して、大男を小兵が投げ飛ばす・・・みたいな感じでしょうかね。

これも一旦簡単な法則にだけ当てはめて考えてみます。

人を一人倒すのに必要な力が10だと仮定します。

相撲というスポーツは、例えばテコの原理を使った場合、支点をうまく作って、作用点になる相手に10の力を伝えるために、力点・・・つまり自分側の力が少なくて済むようにして、8や7、あるいは5、4といった力で相手を倒す事を様々に検討し、その力学の粋を集めた究極のスポーツのひとつだと思います。

ところが貴闘力の相撲は、こうして考えのさらに上を行くケースが多々見られました。
私が見た中で多かったのは、もろ差しに来た(あるいは、成り行き上なった)相手が、なかなかに良い態勢を取ったか、と思った瞬間キメられて、強引に倒されるというシーンですね。

こうした取組みでやはり力学を感じざるを得ません。
先の例で言うならば、貴闘力の相撲はこうです。

人を一人倒す力が10だとして、力点で自分がかける力が5にしかならない態勢になってしまったとします。 相撲では、こういう事を嫌って、様々に良い態勢を取る方法を考える訳ですが、力学的にはもうひとつ正解があります。

それは、力点にかける力を20にする事です。

力点で10かけた力が作用点では5・・・という事は、
力点で20かければ、作用点で10の力になり、人が一人倒れるという論理ですね。

(実際の取組みでは、相手も力をかけてくるし、もちろん貴闘力側も不利な態勢を取りたい訳では無いですし、力をかける方向の要素も大きく欠落した部分ですから、様々な要素が絡み合っているので、こんな単一な論理で理解は到底できないのですが、ひとつの考え方として悪くもないのではないか、と思います。)

とにかくこういう論理(本人が意識していた訳では無いかもしれませんが)も痛快だと思いませんか! 
アメリカン・スポーツ的な、強大なパワーを見せ付けてくれる、とても個性的な力士でした。

という訳で、お二方とも本能に訴えてくるものを感じる選手です。
既に引退され、それぞれ監督として、親方として、第二の人生を歩み始めている二人ですが、是非ともご本人のような夢のある選手・力士を多く育てあげて頂きたい、と思う次第です。

since 3.9.2005 Jose

※ 二人のビッグ・ショウ!/FONT COLOR="#999999">は、Jose's Webの1コーナーです。